有栖川リドルのイギリス生活〜世界のどこにいても謎解きがしたい〜

謎解き部UK支部・有栖川リドルによる、脱出ゲーム・推理ゲームの活動記録。イギリス生活の日記・雑記。

『岩倉アリア』をプレイして、映画『お嬢さん』のような耽美な世界で、シスターフッドに浸る

ごきげんよう。謎解き部UK支部の有栖川リドルです。

みなさん、今日も謎を解いていますか?

2024年6月27日に発売された『岩倉アリア』を、7月にプレイしました。

岩倉アリア

すっかり発売日が来たことを忘れていて、出遅れました。

タイトル発表時は「あ〜、はいはい。パク・チャヌク監督の映画『お嬢さん』の模倣ね」と失礼ながら思っていたのですが、お見それしました。

『お嬢さん』の影響は受けつつも、オリジナル要素を盛り込んだ、面白いゲームになっています。

ADVはプロットやセリフの面白さが重要で、

テキストが面白くなければ、プレイヤーは簡単に飽きてしまうと思います。

でも本作は、情報の見せ方のコントロールがお見事。

紙の本ならば、「この先どうなるの?」「真実はなんなの?」とページをめくる手が止まらない。

まんまと、耽美な世界のミステリーにハマってしまいました。

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ネタバレを含むので未プレイの方はご注意ください。

ゲーム概要

  • タイトル:『岩倉アリア』
  • 設定:1966年の夏、主人公・北川壱子は旧華族の屋敷で、女中として働くことになる。絵画のように美しく、自由気ままに生きるお嬢さま・岩倉アリアに惹かれる壱子。しかし、この屋敷は何かおかしい。お嬢さまの抱えるヒミツ、屋敷の違和感。壱子の好奇心は、真実の扉を開けるカギとなるのかーー。
  • ジャンル:アドベンチャー、シスターフッド
  • クリア条件:各種エンディングに辿り着くこと
  • ハード:Nintendo Switch
  • メーカー:MAGES.
  • Nintendoサイト

store-jp.nintendo.com

ゲームシステム

ADVなので、選択肢を考えながら複数のエンディングを目指す。

全エンディングを回収しやすいように、自動でクイックセーブが走るし

セーブスロットもふんだんに用意されている、親切設計。

思ったよりテキストのボリュームがあり、詩的な表現がたくさん出てくるので

小説を読んでいる感覚になりました。

(”文学的な雰囲気”にしたいんだなあ、という一生懸命さを感じた。)

じっくり読んでいると、トゥルーエンドまで時間がかかりそうだったので、

全てのエンド回収はせず、まず王道を攻めました。

(早く真実が知りたくなる内容なので)

キャラクターデザイン

お嬢様(岩倉アリア)はストーリー上、神秘的なまでに美しい少女でなくてはいけないのですが、イラストレーター100年さんがうまく表現していました。

色白さと髪型が、個人的にaespaのカリナに似ていると思った。

アリアの父・岩倉周の、爽やかそうに見えつつ、気味が悪い笑顔の表現もすばらしい!

目の奥が笑っていない感じをイラストで表現するのは、難しいと思うんです。

あとCVが森川さんというのが良い人選ですね。

腹の底がわからない演技がすてきでした。

映画『お嬢さん』の影響

美しい孤独なお嬢様とメイド、大きなお屋敷、お屋敷から出られないお嬢様、男の親族と同居するお嬢様、お屋敷での絵画教室、謎めいた夜会と客人たち。

とくれば・・・そう、パク・チャヌク監督の『お嬢さん』!!

美術デザインもストーリーもすばらしく、有栖川が何度も見た映画です。

原作は、イギリスの作家サラ・ウォーターズの『荊の城』。小説と映画で結末が違います。

シナリオライター午後ねむるさんが、インタビューで映画の影響を受けたことを明言しています。

そうなってやはりすぐに頭をよぎったのは『お嬢さん』でした。その面白さを知っているからこそ、サスペンス展開での差別化は強く意識しましたね。

サスペンスアドベンチャーゲーム『岩倉アリア』企画・シナリオ担当午後ねむる氏へのインタビューが公開

それそれ!!

設定状況が似ている以上、「どうやってオリジナル要素を出していくのだろう?」

と有栖川も気にしながらゲームをプレイしていました。

 

▼パク・チャヌク監督が、サスペンス展開で気をつけていたこと

情報を上手く隠すこと、情報をどれくらい出すのか?のさじ加減にこだわりました。情報を隠すことのよって生じる緊張感もありますし、登場人物は知らないんだけど、観客だけは知っている緊張感というのもあったかと思います。まるでゲームをするかのように、情報の出し方については考えました。

映画『お嬢さん』パク・チャヌク監督にインタビュー:「抑圧されている状況の中で戦う女性こそが魅力的だと思っている」 | ギズモード・ジャパン

 

この情報の出し方が『岩倉アリア』も巧みでした。

きっと午後ねむるさんも、監督と同じように意識されていたと思います。

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『岩倉アリア』と『お嬢さん』の差別化

差別化のために作られた展開は、宗教による子供の搾取や希死念慮(または幇助)をはらんでおり、

レーティング15歳以上対象で大丈夫なのか?と不安になりました。

この要素は物語の核心に関わるため、公式で事前に注意喚起できないジレンマがある。

シスターフッド

『岩倉アリア』が明示している”シスターフッド”について。

有栖川は、シスターフッドをテーマに描く作品であるなら

結末は「女性が現実を諦めない展開」が理想的だと思います。

(最悪のパターンは、死をもって終わらせるエンディング)

映画『お嬢さん』の結末は、あの世界でMAXの「めでたしめでたし」だと思う。

なので、『岩倉アリア』が『お嬢さん』に影響を受けているなら、同じような結末を期待していた。

しかし、ゲームのストーリーがクライマックスに向かうにつれ、死エンドの気配が濃厚。

「もしかして最悪なパターンで話を締めくくろうとしている?」と失望感がつのります。

ですが!トゥルーエンド来た!!『お嬢さん』エンド!

「こうでなくっちゃ」と頷いてしまった。

 

▼シナリオライター午後ねむるさんが『お嬢さん』の結末から受けた影響

原作『荊の城』から変更したエンディングについて何度か語られているのを目にしていて、私もこれだけの経験をしたアリアと壱子がどうすれば33年後に心から笑っていられるか、四六時中考えて、屋敷でのあの結末に辿り着きました。

サスペンスアドベンチャーゲーム『岩倉アリア』企画・シナリオ担当午後ねむる氏へのインタビューが公開

▼パク・チャヌク監督が、『お嬢さん』原作と結末を変えた理由

お願いだからこのふたり(お嬢様とメイド)がお互いの本当の気持ちを率直に伝えて、ふたりでひとつになって男たちをやり込めて、楽しく最後はどこかへ行ってほしい

映画『お嬢さん』パク・チャヌク監督にインタビュー:「抑圧されている状況の中で戦う女性こそが魅力的だと思っている」 | ギズモード・ジャパン

この祈るような気持ちは、『岩倉アリア』にも継承されている。

試行錯誤の末に、あの結末にたどり着いてくれて良かった。

まとめ

定価で買っても満足だし、今プレイしてよかったと思えるゲームだった。

日本で続々と素晴らしいシナリオライターが台頭しているのは良いことだ。

午後ねむるさんのインタビューがとても良かった。気になる方はぜひ。

2024年、日本のドラマ界でも大きな動きが起きている中、同じ年、そして6月にテキストアドベンチャーゲーム『岩倉アリア』をリリース出来たことは奇跡的なことです。

「女性をきちんと人間として描きたかった」と挙げており、「16歳の少女は49歳の女性になるし、49歳の女性はかつて16歳の少女だったという当たり前のことを、はっきりと描きたかった。

サスペンスアドベンチャーゲーム『岩倉アリア』企画・シナリオ担当午後ねむる氏へのインタビューが公開